メアリー・サロッティ教授によるケンブリッジでのオンラインでの講演がありました。サロッティ教授はいまもっとも評価が高い米国人の外交史家の一人で、ドイツ統一や冷戦終結についての優れた研究があります。そしてこの講演の中で、「NATO東方不拡大の約束はない」と名言。(1/14)
— Yuichi Hosoya 細谷雄一 (@Yuichi_Hosoya) March 1, 2022
ここでサロッティ教授は、「約束」とは定義によるが、通常は外交では「約束」といった場合には、文書化して署名が必要であり、そのことはゴルバチョフも理解していたはずなので、その点では「約束」があったとは両者とも認識していない、と言及。なので、「約束は、なかった」ということに。
文書化した約束が残っているなど、NYTも言っていない。
1)not one inch eastward”というコメントはあった
2)「東方」は東ドイツについてであって東欧ではない。
3)文書化はされてない。
Russia’s belief in Nato ‘betrayal’ – and why it matters today
サロッティーさんは
The author concludes the charge of betrayal is technically untrue, but has a psychological truth.
裏切られてはいないが、裏切られたと思ったのはもっとも、みたいな感じなわけですね。
Did Russia see the implications of the 1990 agreement for Warsaw Pact countries?
Yes, many Russian policymakers opposed the concessions being made at the time by Gorbachev in part because of the implications for eastern Europe
Did Russia complain about the ‘betrayal’?
Repeatedly. In 1993 Boris Yeltsin, angling for Russia to join Nato, wrote to President Bill Clinton to argue any further expansion of Nato eastwards breached the spirit of the 1990 treaty.
その後もロシアは東方拡大に抗議
私がほかのツイートでも書きましたが、サロッティ教授も冷戦後の米国の対ロ政策で、もう少しロシアの安全保障を考慮した外交も可能であったとして、米国政府内の路線対立についても触れました。米国の冷戦後の、勝利主義のようなものが傲慢な態度になったのでしょう
Was there an alternative?
Some say yes. Sarotte argues Washington won its power battle over enlargement, but in a way that led to confrontation, not cooperation, with Moscow.
米国の外交の稚拙さを批判しているわけですね。
いずれにせよ、シュピーゲルが問題にしている文書については
As you may know, there has been a debate over what was pledged (or not) in 1990. Senior policymakers deny a non-expansion pledge was offered. This new document shows otherwise. Further, by any standard def, "beyond" the Elbe includes E. Europe/areas to which NATO later expanded.
— Josh Shifrinson (@shifrinson) February 18, 2022
言及していない。
まあ、これだって口約束といえば、口約束で国際法的効力を持たないといえばそれまでだが、
1)NATO側が東方拡大しないような印象は与えてきた。
2)米国にはもっとうまい外交の仕方があった、
というのは揺るがない。
今日のロシアによるウクライナ侵略は許しがたい暴挙であるが、それまでのNATOの外交や行動に非がなかったわけでもないのである。
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